今もしてしまう、小さなころからのゲン担ぎ

  20, 2018 07:00
いつの頃から言われだしたのか分からない風習に、『 霊柩車を観たら、親指を隠せ 』 というゲン担ぎがある。
そうしないと、親の死に目に遭えないといわれていた。

だから、私たち子供は、町中で霊柩車を見かけると、遥か遠くにあっても通り過ぎるまで親指を真剣に隠していた。

私などは今も、運転中であろうが、無意識に親指を内側に曲げて隠しながら、運転している。
同乗している人が怪訝な顔をして、初めて自分のおかしな動作に気がついたりする。

小さなころからの習慣とは恐ろしいものだと思う。

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同じように、私の生まれ育った大阪泉州地方では、『 おはつ~!』というものがある。

『 おはつ~!』とは、誰かが新しい服を着たり、新品の靴を履いたり、また真新しいモノを持っていたりしたときに、それに気づいた人が、本人の右肩を、「 おはつ~! 」と言いながら叩く。

それは、【 初物に対し、祝福する、あるいは災難を避ける意味 】でするのだと思う。

おはつ~!をもらった子供は得意満面、一躍、ヒロインヒーローになるようなものだから。



小学校5年生のころ、クラスでいつもおはつ~!をもらうのは、町一番の有力者の娘、ケイコちゃん。
彼女は、とっかえひっかえ、毎朝、新しい服を着て登校してくる。

ケイコちゃんのお父さんは、汽船会社を経営していて、大阪市内に貸ビルなどを所有していた資産家だったから、まぁ当たり前かもしれない。

私は、ケイコちゃんが羨ましくて、あっけらかんと誉めそやす周囲の女子が眩しくてならなかった。
そして心で溜息を吐きながら、自分には関係のない世界だと、身を縮こまらせているのだった。



ところがある日のこと。
私も人生初の、『 おはつ~!』をもらうことができた。

低学年のころには、男子のような服装でいつも登校していた私に、母が初めてスカートを縫ってくれたときだった。

新学期、深緑色のギャザースカートを穿いて登校した私。
髪も夏休みの間に、それまでのショートカットからミディアムくらいの長さになっていた。

ふんわりと裾幅のボリュームたっぷりのギャザースカートを穿いていると、
心は少女雑誌、マーガレットの世界で、わたなべまさこ先生が描く、お金持ちの女の子になったようだった。

女の子っていつもこんなふうに、自分をお姫様だと思っているのだろうか。
初めてのスカートは、私に知らなかった世界を教えてくれた。


私の胸には空想の世界が、果てしなく広がる。

そう、私はその朝、初めて少年から少女に変身して登校したのだ。


その私を、クラスの女子が目ざとく見つけてくれた。

「 えっ!!Yちゃ~~ん、おはつ~やん!」

数人が私を取り囲み、口々に質問を浴びせる。

「 えっーどうしたん?女の子みたいにスカート穿いてるん~~?」

母に縫ってもらったと答える私。

「 ほんま!けど、Yちゃんズボンよりスカートのほうが似合ってるで!」

「 ほんまに!可愛いわ! 」

そんな声が、ケイコちゃんにではなく、
この私、男の子のようだった私にシャワーのように降り注ぐ。

賞賛と驚嘆の囁きが、あちらこちらから耳に聞こえてきた。

あまり人に褒めてもらった経験のない私は、その賛辞に、どんな対応をすればいいかもわからず。
ただ俯いたまま、やり過ごすしかなかった。

それでも、心の中はうれしくて、大声で叫びたいくらいだったのに。



しかし、それ以降、私におはつ~!をしてくれる人はいない。

今でも私は、新調の服を着て出かけるときには、
自分の右肩に手を置き、「 Yちゃん、おはつ~!」、と自分で言いながら玄関を出る。

たまに、夫がそんな私に気がついて、呆れたような顔をする。
家族以外の他人がそんな私を見たら、きっと奇妙な人と思うことだろうけど、気にしない気にしない。

それでもって私は、その日一日が、心穏やかに過ごせるのだから。




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