「 一身上の都合により 」 と いう便利な言葉

  13, 2018 07:00
ずっと昔のことになるけれど、私は長く勤務していた会社を辞めた。
退職届を持って、「思うところあり、出版業から広告業にシフトしたい」と、上司に直談判したのだ。


驚く上司、そして、そんな私に、周囲の風当たりはかなりきつかった。

「裏切るの?」そんな言葉を投げかけられた。

積み過ぎた荷物の重さに喘ぎ、沈みかけた船から、一人だけ降りるのか。
しばらく、そんな自分の心の声に苛まれたこともあった。


二十年前、活字業界は大きな転換期を迎えていた。
今のような時代が来ることは予想していなかったにせよ、誰もが出版業の未来に不安を抱えていた。
転職と言う言葉があちらこちらで囁かれる。



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そんな中には、記事屋と呼ばれる人たちも居た。

はっちゃん先輩は、記事屋だった。
校了間際の紙面の足りないコマを、はっちゃん先輩に頼むと、完璧に解決した。

記事屋を今風に言えば、フリーライター。

それぞれ専門分野を持っていて、それに応じて、『政治のたもやん』とか『法律のけいちゃん』などと呼ばれていた。

はっちゃん先輩は、オールラウンダー。
どんな依頼でも、はっちゃん先輩に依頼すると、全てオーケー。

このように書くと、オールラウンダーって大したことないと思われるかもしれない。

けれど、インターネットも無い時代、記事屋と呼ばれる人々は、
知識と情報の宝庫を自信の体内フォルダに持っていた。

それを適宜、引き出して使う。
それは相当な知の量がなくてはできないこと。


はっちゃん先輩は顔をくしゃくしゃにして笑う、私は今も思い出すことができる。
裏切り者扱いの私に、唯一、応援してくれた。

辞める私に付き合ってくれたわけではないけれど、同じように辞めた。
今は、石垣島で悠々自適、太公望のような日々を送っている。


昨年のはじめ、私は長く付き合いのあったクライアントとの仕事を断った。
その瞬間、喪失感に囚われたけれど、正直、やれやれという気持ちが勝った。
そして専業主婦になった。

私のゆくゆくは、できれば夫とともに、はっちゃん先輩のような、暮らしがしたい。
寒い今の時期には、空を見上げては暖かな南の島の、先輩を想う。




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